200日後、2児の母になるひとによる本のレビュー

38歳、ふたりめ妊娠の記録とブックレビューのせてます

本を巡るガチモンのバトル。ミハイル・エリザーロフ『図書館大戦争』

片田舎で育児してる平和な暮らしとは

まるっきり対極の世界。

私が本に求めてるのは

自分には一生降りかからないであろうドキドキしたスリル。

本を巡るガチモンのバトルに目が離せなくなる1冊。

 

 

秘密の力を持つ7つの本をめぐり、図書館・読書室の暗闘がはじまる。

叔父の遺産を処分するため、青年アレクセイはウクライナからロシアに向かう。そこで出会ったのは、亡き叔父を司書とする「シローニン読書室」の面々だった。

忘れられた社会主義時代の作家グロモフの7つの本(「記憶」「力」「喜び」「忍耐」「権力」「憤怒」「意味」)。恐るべき力を秘めたこれらの本を、「図書館」・「読書室」が血で血を洗う決闘によって奪い合う。

表紙の狼が怖いと家族に大不評でした……裏はもっと不気味。

図書館の静寂さとかは何もないアンチ平和な物語

ジャンル的にはスプラッターノヴェルとされている問題作で、まったく平和的解決がなされていない内容になっています。

 

今は亡きソ連に対するノスタルジーが随所に散りばめられています。誰にでもあるもう決して取り返せないもの、人、時間。取り戻せないからこそ美しく感じる刹那に共鳴してしまうからこそ魅力を感じるのかなと思いました。

いいよね、ロシア文学。この哀愁漂う感じほんと好き。

ソ連に対するノスタルジー

著者のミハイル・エリザーロフは1973年ウクライナ生まれ。従軍するも体調を崩して軍の病院に入院した日にソ連が崩壊し動員解除。

 

著者近影を見ると、ムキムキしたゴシックなパンクロッカー風情。ミュージシャンであり小説家でありというマルチな才能は日本でいう辻仁成って感じなのでしょうか。

 

ちなみに訳者は『サハリン島』でお馴染み北川和美さん。ロシア語で書かれていたとは思えないほど自然に日本語に落とし込んでいてとても読みやすかったです。