佐藤究作品に登場する主人公はいつだってフットワークが軽い。
心赴くまま世界の果てまでいっちゃう行動力。
自分にはないので傍観に徹して
お布団の中でぬくぬくしながら読み終わった。
少年は、空を夢見、空へ羽ばたく――空を支配するG(重力)に取り憑かれ、Fを操る航空宇宙自衛隊員・易永透。日本・タイ・バングラデシュを舞台に「護国」を問う、圧巻の直木賞受賞第一作。
フットワークが軽すぎて心地良いほどの傍観者視点でいられる
『テスカトリポカ』もそうだったけど、それはもう清々するほど軽やかに国境を超えていきます。日本にいたはずが、気づけばタイ、バングラデッシュの辺境に。
だけどふと気づけば足元には自分の原点、というか起点を踏みしめてることに気づく。
『幽玄F』は戦闘機や航空自衛隊などの”パイロットもの”ではあるのですが、この分野に何一つ知識を持っていなくても楽しめる作品でした。文体も難しすぎないので、中学生〜くらいから読破できそう。
巻末の参考文献の量に驚愕
1977年福岡県生まれの佐藤究さん、2004年佐藤憲胤名義の『サージウスの死神』で第47回群像新人文学賞優秀作となり、同作でデビューするも佐藤究名義の2作目が出るのが16年の『QJKJQ』。
この空白の12年間についてインタビューを読んでから、人間的な魅力にすっかりファンになってしまったんですよね〜。
巻末の参考文献の量を見て驚愕。佐藤さん根っから飛行機詳しいとかではなく、リサーチものすごいかけてる。まさに努力の天才。
『テスカトリポカ』と比較してしまうと、どうしてもパンチが足りないとかもっと度肝が抜かれたかったと思う反面、声なき心の震えのような、陰的な衝撃波がくるタイプの作品でした。
個人的におすすめ佐藤究作品TOP3
も合わせてのせときます。
・『テスカトリポカ』
・『爆発物処理班の遭遇したスピン』(短編集)
・『Ank:amirroring ape』